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消し去ること

 東日本大震災により全国で33万世帯が転居したが、福島県内での転居件数はおよそ7万1000世帯、住宅に住めなくなったことが理由で転居した世帯にかぎっても4万世帯にのぼるという。

 震災から数年が経った、福島第一原発から20キロ圏内の地域では、やむを得ず主人を失った家や建物がそのまま放置され、多くが廃墟と化している。そこで私たちが目撃したのは、家屋のみならず道路や車、人工物のすべてを、木や草が覆い尽くした様だった。人が住まなくなった環境において、その増殖の速さは人類の足跡まで消してしまうような勢いだ。

 このシリーズは、福島の取り残された街並みを自然が呑み込んでいく、その様子を記録したものだ。

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